■<労働者の採用と労働条件の明示について>
▲使用者が労働者(正社員・パートタイマー・契約社員・登録社員等)になろうとする者を採用する場合には、その採用後の労働条件を明示する必要があります。労働条件を明示することは、労働契約を結ぶ上でも大変重要であるとされており、
●「求人者は、求人の申込みにあたり公共職業安定所又は職業紹介事業者に対し、求職者が従事すべき業務の内容及び賃金,労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」<「職業安定法」>
●「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金,労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」<「労働基準法」>
(※明示すべき労働条件⇒@労働契約の期間に関する事項・A就業の場所及び従事すべき業務に関する事項・B始業及び終業の時刻,所定労働時間を超える労働の有無,休憩時間,休日,休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項・C賃金<退職手当及び臨時に支払われる賃金,賞与及びこれに準ずるもの並びに最低賃金を除きます。>の決定,計算及び支払の方法,賃金の締め切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項・D退職<解雇の事由を含みます。>に関する事項・E退職手当の定めが適用される労働者の範囲,退職手当の決定,計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項・F臨時に支払われる賃金<退職手当を除きます。>,賞与及びこれに準ずるもの並びに最低賃金額に関する事項・G労働者に負担させるべき食費,作業用品,その他に関する事項・H安全及び衛生に関する事項・I職業訓練に関する事項・J災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項・K表彰及び制裁に関する事項・L休職に関する事項<E〜Lについては規定を設ける場合のみとなります。>)
●「使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について労働者の理解を深めるようにするものとする」<「労働契約法」>
等というようにそれぞれの法律に規定が設けられています。尚、実際に労働者を雇用した場合には、正社員のみではなく、パートタイマーや契約社員・登録社員等においても必ず書面を交付することにより労働条件を明示しなければならないことになっています。(「書面」ということであれば明示方法については特に規定は設けられていないのですが、「就業規則」の交付を中心として又は「労働条件通知書」を交付して明示する,あるいは事業主が独自の方法で明示するということになります。)
(※書面を交付することにより明示すべき事項⇒@労働契約の期間に関する事項(=期間を定めない場合等の旨)・A就業の場所及び従事すべき業務に関する事項(=雇い入れ直後のもの。配置転換,出向等の旨)・B始業及び終業の時刻,所定労働時間を超える労働の有無,休憩時間,休日,休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項(=所定労働時間を超える労働,休日労働の有無)・C賃金<退職手当及び臨時に支払われる賃金,賞与及びこれに準ずるもの並びに最低賃金を除きます。>の決定,計算及び支払の方法,賃金の締め切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項(=初任給の金額,諸手当の金額,昇給の有無)・D退職<解雇の事由を含みます。>に関する事項(=雇用契約の終了事由))
また更に、●「使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を各労働者(日々雇い入れられる者を除きます。)について調製し、労働者の氏名・生年月日・履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない」・「記入すべき事項に変更があった場合においては遅滞なく訂正しなければならない」 <「労働基準法」>
(※「労働者名簿」に記入すべき事項⇒@氏名・A生年月日・B性別・C住所・D従事する業務の種類・E雇い入れの年月日・F退職の年月日及びその事由<退職の事由が解雇の場合にはその理由を含みます。>・G死亡の年月日及びその原因<常時30人未満の労働者を使用する事業においてはDについての記載は不要となります。> )
●「使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない」<「労働基準法」>
(※ 「賃金台帳」に記入すべき事項⇒@氏名・A性別・B賃金計算期間・C労働日数・D労働時間数・E時間外労働時間数・F休日労働時間数・G深夜労働時間数・H基本給,手当その他賃金の種類ごとにその額・I賃金の一部を控除した場合にはその額)
等といった規定が設けられており、使用者に「労働者名簿」と「賃金台帳」の作成が義務付けられています。
■<賃金について>
▲賃金は、「労働基準法」において「賃金,給料,手当,賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と規定されています。
賃金は労働者の生活の糧となるものであり、また、働いた後に支払われる(=後払い)ものであるので、確実に労働者に支払われなければ重大なことになります。そこで、「労働基準法」において「賃金は、通貨で、直接労働者にその全額を支払わなければならない」・「賃金は、毎月1回以上一定の期日を定めて支払わなければならない」と規定され、@通貨払いの原則・A直接払いの原則・B全額払いの原則・C毎月1回以上払いの原則・D一定期日払いの原則という5つの原則(尚、@口座払い・A代理受領の禁止・B「協定書」による控除・C臨時に支払われる賃金・D繰り上げ払いについての例外もあります。)が設けられることになりました。
介護サービスの事業においては、それぞれのサービスの供給内容が均一化しているということもあり、月給や時間給に係りなく労働時間あたりの単価が均一化する傾向があります。
良質な介護サービスを提供して事業を行っていくためには、労働者が生き生きとやりがいを感じて働くことができるように資格や能力等に応じた処遇を行う必要があり、中でも特に賃金は重要で、従来のように「介護は女性の仕事である」という位置付けや雇用形態の別ごと等で賃金に格差を設けるというのではなく、「他の産業や類似の事業における賃金の水準を常時把握すると同時に(他の産業や類似の事業と比較しても)見劣りしない賃金が支払われるように経営努力して優秀な労働者を確保する」という取り組みを行うことが何よりも大切となります。
■<労働時間について>
▲労働時間は、「労働基準法」において「休憩時間(1日の労働時間が6時間を超え8時間以下の場合には45分以上,8時間を超える場合には1時間以上付与しなければならないとされています。)を除いて1週間について40時間を超えて,1日について8時間を超えて労働させてはならない」と規定されています。尚、介護サービスの事業においては、「労働基準法<別表>」の「病者又は虚弱者の治療,看護その他保健衛生の事業」に該当するとされており、常時10人未満の労働者を使用する事業所の場合には、1週間について44時間,1日について8時間まで労働させることができる」という特例の制度が適用されることになっています。
また、1週間40時間,1日8時間を超える勤務が必要となる場合に1ヶ月や1年を平均して1週間40時間以内になるようにあらかじめ労働時間のスケジュールを組んで日,週,月における各労働者の「勤務表」を設定して実施するという「変形労働時間制」の制度がありますが、介護サービスの事業の場合には、「1ヶ月単位の変形労働時間制」の導入が中心となっていますが、「1年単位の変形労働時間制」を導入することもできるようになっています。
介護サービスの事業では、夜間や深夜の勤務を前提とするものがある等,他の一般の事業と比較して特殊な業種であることから、正社員のみではなく、パートタイマーや契約社員・登録社員等を有効に活用することを念頭に置いて「勤務割表」を作成し、業務を実施していくことが大変重要となります。尚、実際に労働時間の設定を行うにあたっては「就業規則」の規定によることになりますが、一般には正社員・パートタイマー・契約社員・登録社員等,雇用形態の別ごとに休憩時間,休日,休暇,育児休業及び介護休業の制度についても考慮に入れながら検討していくことになります。
■<「就業規則」の作成について>
▲「就業規則」とは、使用者がそれぞれの事業場において労働者が守らなければならない就業上の規律・職場の秩序・労働条件についての具体的な内容等を規定して明文化し、労働者に周知して事業場に備え付けておくものをいいます。
「労働基準法」により、常時10人以上の労働者(正社員のみではなく、パートタイマー・契約社員・登録社員等も含まれます。)を使用する使用者にこの「就業規則」の作成と所轄労働基準監督署長への届け出(「就業規則」の変更を行った場合にも同様に届け出なければならないとされています。)が義務付けられています。(尚、常時使用する労働者が9人以下である場合には、法律上は「就業規則」の作成は義務付けられていないのですが、介護サービスの事業の運営を円滑に進めていく上でも是非とも作成しておかれるのがよいでしょう。) 尚、この「就業規則」には、必ず記載しなければならない事項<「絶対的必要記載事項」>として、
@始業及び終業の時刻,休憩時間,休日,休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
A賃金<臨時の賃金等を除きます。>の決定,計算及び支払いの方法,賃金の締め切り及び支払いの時期並びに昇給に関する事項
B退職に関する事項<解雇の事由を含みます。>
等の事項が、また、規定するか規定しないかは自由なのですが、規定した場合には必ず記載しなければならない事項<「相対的必要記載事項」>として、
@退職手当の規定が適用される労働者の範囲,退職手当の決定,計算及び支払いの方法並びに支払いの時期に関する事項
A臨時の賃金等<退職手当を除きます。>及び最低賃金に関する事項
B労働者の食費,作業用品その他の負担に関する事項
C安全及び衛生に関する事項
D職業訓練に関する事項
E災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
F表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項
G前各号の他、その事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においてはこれに関する事項
等の事項が、更に必ずしも記載する必要がない事項<「任意的記載事項」>として、
@服務規律,誠実勤務義務等の労働者の義務に関する事項
A介護サービスの事業を行う上で基本となる遵守事項
B業務上知り得た事項についての守秘義務に関する事項
C指揮命令及び人事異動に関する事項
D法人の秩序の維持に関する事項
Eセクシャルハラスメント・パワーハラスメントに関する事項
F事業所の管理,福祉機器及び福祉用具の取り扱い,私有自動車及び社有自動車の取り扱いに関する事項
G能率の向上その他の協力関係に関する事項
H従業者の個人情報の取得,利用目的,関係機関等への提供,個人情報データの処理及び苦情の処理に関する事項
等の事項があります。また、実際の「就業規則」の作成手続きの主な流れとしましては、以下の通りになっています。
@「就業規則」の原案の作成
↓
A労働組合又は労働者の過半数を代表する者への「就業規則」の原案の提示と意見の聴き取り
↓
B「就業規則」の確定
↓
C所轄労働基準監督署長への届出
↓
D労働者への周知
■<安全衛生管理について>
▲事業主の責務として「介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律」においては、「事業主は、その雇用する介護労働者について労働環境の改善,教育訓練の実施,福利厚生の充実その他の雇用管理の改善を図るために必要な措置を講ずることによりその福祉の増進に努めるものとする」 と規定され、また、作業の管理として「労働安全衛生法」においては、「事業者は、労働者の健康に配慮して労働者の従事する作業を適切に管理するように努めなければならない」と規定されています。
介護サービスの事業における労働というのは安全衛生上の問題も多いことから、使用者には(労働者の雇い入れ時の健康診断や定期健康診断等の実施も含めて)安全衛生のための教育や安全衛生に関するミーティング等を日常的に取り入れて実施する等して労働者の保護を目的として安全衛生に配慮する必要があり,また、介護サービスの事業における労働というのは人対人の労働であることから、使用者には労働者が心身の過度のストレスを抱え込みすぎないようにということで、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」を基にした健康管理やメンタルヘルスケア等による健康管理に配慮する必要があります。
尚、事業所における安全衛生管理を行う組織としては、
@安全管理者
A衛生管理者
B産業医
C安全衛生委員会
D安全衛生推進者
<常時50人以上の労働者を使用する事業場又は常時50人未満の労働者を使用する事業場でそれぞれ選任が義務付けられている又は選任が必要であるとされています。>等といったものがあり、介護サービスの事業所で働く労働者の衛生管理や健康管理を行うためにも必要なものとなっています。
■<労働保険・社会保険の加入について>
▲実際に介護サービスの事業を行っていくにあたり、正社員・パートタイマー・契約社員・登録社員等に係りなく、労働者を1人でも使用する事業主は、「労働基準法」が適用されて職業病や業務上の事故によるケガ,死亡等といった労働災害の発生に対して災害補償の義務を負うことになっているわけですが、具体的には、労働者を保護するために「労働者災害補償保険」の制度に加入して保険料の納付を行い、そして労働災害が発生した場合に給付が行われるという形になっています。(尚、通勤災害に関しては業務に付随するものとして給付が行われることになっています。)
また、「雇用保険」においては、介護サービスの事業所で働く労働者で常時使用される者について加入の義務があるとされているわけですが、パートタイマー・契約社員・登録社員等といった短時間労働者であっても、
@1週間の所定労働時間が20時間以上であること
A31日以上引き続き雇用されることが見込まれること
等といった要件を満たしている者の場合には「雇用保険」が適用されることになっていますので、加入の手続きを行う必要があるとされています。(尚、65歳以前から勤務しており65歳以後も勤務するといった場合には「高年齢継続被保険者」となります。また、65歳以上で新規に雇用されたという場合には「雇用保険」は適用されないことになっています)。
ところでまた、すべての法人の事業所と常時5人以上の労働者を使用する個人の事業所で一定のものについては、「健康保険」と「厚生年金保険」に加入しなければならないことになっており、パートタイマー・契約社員・登録社員等の短時間労働者についても、
@1日又は1週間の所定労働時間が正社員の所定労働時間の4分の3以上であること
A1ヶ月の所定労働日数が正社員の所定労働日数の4分の3以上であること
等といった要件を満たしている場合には「健康保険」と「厚生年金保険」が適用されることになっていますので、加入の手続きを行う必要があるとされています。(尚、臨時の労働者について、@日々雇用される者で1ヶ月を超えない者・A2ヶ月以内の期間を定めて使用される者で所定の期間を超えない者・B季節的業務に4ヶ月を超えない期間使用される者・C臨時的事業の事業所に6ヶ月を超えない期間使用される者については「健康保険」と「厚生年金保険」の適用が除外されており、また、「厚生年金保険」については70歳以上である場合には原則として新規に加入できないことになっています<配偶者等で被扶養者となっている者についても様々な取り扱いがなされています>。)
■<介護職員の確保と定着に向けた取り組みについて>
▲「介護サービスの事業の職務に従事したい」という思いで事業所に就職される方の中には、『職務を通じてより高い資格や能力を身につけて自分自身を成長させていきたい』,あるいは『事業としての将来性がありやりがいを強く感じている』という方がたくさんいらっしゃいます。
実際に事業を運営していくにあたり、管理職を育成・支援するための研修の機会を充実させることや能力に応じた人員の配置及び処遇を行うこと,また、従業者の要望に応えていくことや制度面における対応(介護保険制度や関係法令等についての情報についての周知を行うこと等)を図っていくことはもちろんのことなのですが、介護職員を確保して定着させるためには、
@「介護サービスの事業としての経営理念や実際の介護サービスの提供方針及び方向性について明確にする」
A「事業所内におけるコミュニケーションを活発にして職員の間で情報の共有を図る」
B「職員の能力開発(教育訓練<事業理念に関するもの,接遇マナーに関するもの,介護の知識や技術に関するもの,新規職員への教育訓練,職員の資格取得に向けての教育訓練>及びその他の研修等),事故やトラブル等の危機への管理体制,安全衛生の管理体制の整備,メンタルヘルスケア(職務上の個別相談,指導体制の整備)を実施する」
等して事業所としての職場環境の整備を行っていくことが何よりも大切となります。その際には、事業主や管理職の職員一人ひとりに対する見方というものが重要視されることになるわけですが、職員一人ひとりについて介護サービスの事業の運営及び実際の介護サービスの提供を行っていく上での手段とみなすのではなく、事業所の一員とみなして職員それぞれの特性や成長に応じた処遇(人事考課や人員配置を行って業務及び職員の特性に応じた職務や処遇の体制を整備すること等)を行うことで一人ひとりの職員の専門職としての知識や技術等の習得が進められてやる気や満足度を向上させることになり、職務に対する悩み,不安や不満,職場内での疎外感や職務上の役割(利用者とその家族との間の統一された役割)の不明瞭感といったものが解消され、更にはサービスの質を向上させること,事業の生産性を向上させることにもつながっていくことになります。「新たに事業所に就職して職務に従事する者にとって魅力のある職場に」,また、「利用者から選ばれる事業所に」していくためにも、こうした取り組みを行うことが大変重要となります。
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