介護サービス事業を始める前に

■介護サービス事業を始めるにあたり、「在宅型」か?「施設型」か?ということになるかと思いますが、まず「在宅型」のメリットとしては、

@初期投資が少ない
A必要な数の人員を集めさえすれば簡単に事業を始めることができる

といったことが挙げられますが、その反面デメリットとしては、

@利益率が低い
A業務形態が不定形である
B契約やサービスの提供等の面で利用者とのトラブルが発生しやすい

といったことが挙げられます。一方、「施設型」のメリットとしては、

@一定数以上の利用者を確保できれば利益につながる
A業務形態が定型的である

といったことが挙げられますが、その反面デメリットとしては、

@土地や建物・設備等の投資のリスクがある

といったことが挙げられます。介護を受けたい場所として自宅を挙げている高齢者が数多いといわれているわけですが、そのような中で介護サービス事業を始めて利益を上げていくためには、「訪問系の介護サービス」を中心に他の事業を組み合わせた事業展開、例えば、

@「居宅介護支援事業」をベースに「訪問系・通所系の介護サービス」・「福祉用具貸与・販売等の事業」を組み合わせる方法
A移送や配食等介護保険の対象外のサービスを組み合わせる方法

等について検討していく必要があります。

 

                                                          ■ところで、実際に介護サービス事業を行う上で事業としての基盤を築いていくためには、しっかりとしたマーケティング戦略を立て、このマーケティング戦略を基にして事業計画を作成することが何よりも大切となります。


★「マーケティング」について


●「(情報収集と分析)」

介護サービス事業は、限定された地域内で事業展開を行うことになりますので、利用者のニーズに対応したサービスを提供していくためには、実際に事業を行う地域の情報の収集と調査及び分析(市区町村の介護保険事業計画の情報・地域包括支援センターや社会福祉協議会・医療機関その他の関連機関の情報の収集、介護サービス施設や指定事業者・介護給付費等についての調査を行うこと)が大切になります。

●「(戦略の策定)」

情報分析の結果を基にして戦略の策定を行いますが、この中心となる考え方の手段として、

1)商品戦略(Product)
<他の事業所と競争していく中で、「どんなサービスを提供するのか?」・「どのくらいの利益を上げるのか?」について明確にします。>

                                                           2)価格戦略(Price)
<サービスを提供する上でのコスト・価格に対する利用者の受容性・他の事業所との競争力を考慮して価格の設定を行います。>

                                                           3)流通戦略(Place)
<利用者に対して効率的なサービスを提供することを念頭において立地・予算・スペース等を検討し、サービスの提供場所の設定及び物件の選定等を行います。>

                                                           4)プロモーション戦略(Promotion)
<サービスを提供していく中で、パンフレットやホームページの作成、タウンページへの掲載、セミナーやイベントの開催等の広告宣伝やPR活動、居宅介護支援事業者・既存の介護サービス事業者・地域包括支援センター・社会福祉協議会・医療機関・自治体や地域住民への営業活動、顧客満足度向上に向けてのホウ(報告)・レン(連絡)・ソウ(相談)体制の整備とISO9001の取得等の効果的な組み合わせについての決定を行います。>

                                                              5)接客要員(Personnel)と顧客参加(Participation)
<人材の質の向上ということで、サービス提供者の利用者に対する接し方やマナーについての完成度を高めること、サービスの質の向上ということで、利用者参加型のサービスの提供を促進させること、更に経営理念の確立や社員のパート化による人件費の固定化の防止・業務のアウトソーシング化等の戦略の策定、P(計画)D(実行)C(確認)A(対策実行)サイクルを確立させることによって、事業経営の質を高めていくことが重要となります。>

等といったものが挙げられます。

●「(戦術の策定)」

こうして策定した戦略を基にして、実際の活動内容をスケジュールと共に年間計画・半期計画・四半期計画・月間計画・週間計画等というように、具体的な行動計画として(それぞれの活動に対する予算の設定も同時に行います)順次決定していくことになります。


★「事業収支計画の作成」について

                                                          ●事業としての基盤を築いていくためにはまた、実際の事業計画の作成に入る前に、

@「なぜ介護サービス事業を始めるのか?
A「いつから事業を始めるのか?
B「どの場所で事業を始めるのか?
C「誰が事業を行うのか?
D「誰に対して事業を行うのか?
E「(料金体系も含めて)どのようなサービスを提供するのか?
F「どのような方法でサービスを提供するのか?

等について考えることが大切です。そうして、具体的な事業収支計画を作成していきます。

●「(資金計画)」

法人を設立するために必要な費用・事業所費用やその他の備品等の費用・事業の立ち上げ後の運転資金等についての検討を行います。

●「(売上計画)」

基本となる部分・加算や減算が行われる部分について確認する等、それぞれの介護サービスについての介護報酬単位の構造をしっかりと把握した上で検討を行います。

●「(経費計画)」

介護サービス事業において、経費の大半を占めるのは人件費です。人員の職種と配置人数(事業の種類や利用者の数により法律で定められています)についての確認、また、人件費について、職種ごとの地域の相場を調査します。

●「(収支計画)」

作成した売上計画と経費計画を基に、どのくらいの利益(売上高−経費)が出るかについて算出します。また、経費を抑えて利用者の数を増やし、売上高をアップさせるための計画についても同時に検討を行います。

●「(資金繰り計画)」

毎月発生する事業所の家賃や社員の給与の支払いには現金が必要となりますが、介護報酬は介護保険請求の約1ヶ月半後に入金されることになっています。売上の大部分を介護報酬に依存する事業者の場合には、

・「売上高の現金の入金はいつ行われるのか?
・「毎月の支払いの際に手元に必要な現金があるのか?

について把握しておく必要があります。尚、事業を立ち上げる場合の資金繰り計画は、1ヶ月単位のものを作成します。また、これらの事業収支計画は、一度作成すればそれで終了又は完成というものではありません。様々な事情等によって計画の変更を余儀なくされる場合もあります。事業を失敗させないためにも、計画の見直しも含めて作成していくことが何よりも重要となります。

 

                                                          ★「物件の選定」について
 

●各介護サービス事業によって異なるのですが、物件の選定にあたっては、

@交通の便や道路幅、周囲の環境等の立地
A設備の設置等についての予算
B事務所等の室内や駐車場等のスペース

等を考慮する必要があります。実際に物件を探すといった場合には、地元の不動産業者を利用する方法もありますが、商工会議所や商工会等でも空店舗情報等についての情報収集ができるようになっています。

 

                                                          ★「職員の採用」について
 

●介護サービス事業においては、多くのホームヘルパーが必要になります。このホームヘルパーの雇用形態としては、

@正社員
Aパートタイマー
B契約社員
C派遣社員
D登録社員

等といったものがありますが、事業者は募集や採用方法についてはもちろん、どのような雇用形態の下で組織化し、サービスの提供を行っていくかについて検討する必要があります。実際には、利用者宅への訪問日時の予定表の作成や各ホームヘルパーごとの勤務の予定表の作成、担当するエリアの決定等を行い、ローテーションを組むことになりますが、利用者の要介護度・認知症の有無・その他性格面、また、ホームヘルパーの能力や適性等(労務管理や定期的な教育訓練の実施等を行うことも重要です)、利用者とホームヘルパーの相性を考慮しながら、サービスの提供を行っていかなければなりません。

 
                                                           ★「介護職員基礎研修」について
 

●介護職員基礎研修というのは、介護職員として介護サービスに従事しようとする者を対象に、対人への理解や対人への援助の基本的な視点や理念、職務に従事する上での基本姿勢、基礎的な知識や技術等を修得させること、より専門的な知識・技術を修得するための機会を与えることを目的として行われるものです。この介護職員基礎研修の実施主体は、都道府県知事又は都道府県知事の指定した者となり、また、介護福祉士資格を有していない者で、今後介護職員として従事しようとする者若しくは現任の介護職員が対象となります。研修科目等については告示に従って定められており、各科目とそ れぞれの研修時間数については、以下の通りとなっています。

1)研修科目と研修時間数

<基礎理解とその展開:360時間>
1 生活支援の理念と介護における尊厳の理解:30時間
2 老人、障害者等が活用する制度及びサービスの理解:30時間
3 老人、障害者等の疾病、障害等に関する理解:30時間
4 認知症の理解:30時間
5 介護におけるコミュニケーションと介護技術:90時間
6 生活支援と家事援助技術:30時間
7 医療及び看護を提供する者との連携:30時間
8 介護における社会福祉援助技術:30時間
9 生活支援のためのアセスメントと計画:30時間
10 介護職員の倫理と職務:30時間

<実習:140時間>
1 事前演習:8時間
2 実習:124時間
1)施設・居住型実習:80時間
2)通所・小規模多機能型実習
訪問介護実習:40時間
3)地域の社会資源実習:4時間
3 事後演習:8時間

合 計:500時間

(尚、1〜2級課程修了者・介護業務の現任者等については、以下の通りに科目の一部が免除されることになっています。)

@ 介護等の実務経験1年以上の者(従事期間が365日以上かつ就労日数が180日以上の者)
・1級課程修了者:60時間
・2級課程修了者:150時間(介護技術講習会修了者は120時間)
・その他:300時間(介護技術講習会修了者は270時間)

A介護等の実務経験1年未満の者
・1級課程修了者:200時間
・2級課程修了者:350時間
・その他:500時間



★「助成金」について

                                                           ●新しく介護サービス事業を始めるといった場合には、担当窓口に申請することにより助成金の支給を受けることができるようになっています。介護サービス事業の場合には、基本的には、介護労働安定センター都道府県支部に「申請計画書」と必要書類を添付して提出し、助成金の支給を受けるという形になっています。介護サービス事業関連の主な助成金の種類としては、以下のものがあります。


1 「介護基盤人材確保助成金
(介護の分野において新しいサービスの提供等を行おうとする事業主が中心的な役割を担う人材を雇い入れた場合に支給されるというもの)
<特定労働者(社会福祉士・介護福祉士・ホームヘルパー1級の資格があり、保険医療や福祉サービスでの実務経験が1年以上の者又はサービス提供責任者としての実務経験が1年以上の者。但し、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者である雇用保険の一般被保険者は除きます。)1人あたり6ヶ月で70万円{上限3人}>

                                                                                 
2 「介護雇用管理助成金
(介護の分野における新しいサービスの提供等に伴って、雇用管理の改善や人材育成のための教育訓練を行う事業主に対して支給されるというもの)
<1年間に雇用管理に要した額の2分の1〜3分の2(上限100万円){教育訓練の場合には賃金の助成があります}>

                                                          助成金の詳細についてはこちら。

介護サービス事業について

■介護サービス事業では、営業エリアが必然的に限定されますので、その地域に根を下ろした事業展開が求められることになります。利用者は、緊急時の対応等の面で融通がききやすいといったことから、近隣でサービスの提供を受けることを希望していますが、実際にサービスの提供を受けるにあたり、「そのサービスが自分自身にとって有益なものなのか」・「信頼できるものなのか」と常に不安を抱いています。そしてまた、利用者によっては家族構成・性格・精神(健康)状態・生活習慣・要望等は大きく異なります。そこで、個々の利用者の事情を把握していかにきめ細かくサービスを提供してあげられるか大変重要になってくるわけですが、例えば、事業所案内やチラシ・パンフレットを作成する等して利用者に事業所や提供するサービスの内容についてよく知ってもらう、あるいは利用者の信頼を得ていくための仕組み作りを行う、更には緊急の場合に備えて他の医療機関との連携体制を整備しておく、利用者に安定したサービスの提供を行っていくにあたりホームヘルパーを多く確保しておく、といったこと等を行う必要があります。                                     ところでまた、介護サービスは、介護福祉士やホームヘルパー等「人」が提供するサービスです。利用者は安定した質の高いサービスを求めています。実際にサービスの提供に従事する専門職員の置かれた環境や精神(健康)状態に問題があれば、それが利用者にも不安を与えてしまうことになりかねません。利用者のニーズに対応したサービスを提供していく中で利用者から認知され、信頼を得ていくには、サービスの提供に従事する専門職員の人材の質を高めておくこと(職員の健康管理や衛生管理を徹底して行う等)も大変重要になります。                                                           

                                                             

                                                           ■一般に、介護サービス事業は「介護保険サービス事業」と「介護保険対象外のサービス事業」に分けられるのですが、介護サービス事業の中心である「介護保険サービス事業」には「介護給付」と「予防給付」があり、サービスの提供形態によって、

                                                          @「居宅介護サービス」 

 

・(介護予防)訪問介護                                                     ・(介護予防)訪問入浴介護                                                  ・(介護予防)訪問看護                                                     ・(介護予防)訪問リハビリテーション                                                ・(介護予防)居宅療養管理指導                                               ・(介護予防)通所介護                                                    ・(介護予防)通所リハビリテーション                                            ・(介護予防)短期入所生活介護                                               ・(介護予防)短期入所療養介護                                               ・(介護予防)特定施設入居者生活介護                                                  ・(介護予防)福祉用具貸与                                                  ・(介護予防)特定福祉用具販売                                               ・(介護予防)住宅改修                                                    ・居宅介護支援                                          

                                                          A「地域密着型介護サービス

 

・夜間対応型訪問介護                                              ・(介護予防)認知症対応型通所介護                                             ・(介護予防)小規模多機能型居宅介護                                            ・(介護予防)認知症対応型共同生活介護                                         ・地域密着型特定施設入居者生活介護                                    ・地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護 


B「施設介護サービス

・介護老人福祉施設                                               ・介護老人保健施設                                               ・介護療養型医療施設

 

等といった事業があります。一方、「介護保険対象外のサービス事業」には、主なものとして、

1 「配食サービス
(=高齢者宅への食事の宅配を行うというもの)
                                                           2 「緊急通報サービス
(=緊急通報機器の開発や貸し出し・通報時に駆けつけるサービスを行うというもの)
                                                           3 「医療・介護情報提供サービス
(=病院やケアハウス・有料老人ホーム等、医療・介護関連の情報提供を行うというもの)
                                                            4 「日用品提供サービス
(=地域の商店街等が連携して高齢者への宅配サービスを行うというもの)
                                                           5 「訪問理美容サービス
(=自宅で寝たきりの高齢者等に対して理容師や美容師がパーマ・カットのサービスを行うというもの)
                                                             6 「外出援助サービス
(=高齢者の移動をサポートするサービスを行うというもの)
                                                           7 「クリーニングサービス
(=高齢者宅を訪問し、洗濯等のサービスを行うというもの)
                                                            8 「財産管理サービス
(=高齢者の財産を管理するサービスを行うというもの)
                                                           9 「賃貸式老人ホーム
(=介護サービス付きあるいは介護サービス付き以外の有料老人ホームにてサービスを行うというもの)

等といった事業があります。また、介護サービス事業に関連する主な専門職とその概要については以下の通りになります。 
 


ホームヘルパー 要介護の高齢者宅を訪問し、身体介護や家事援助を行います。
介護支援専門員(ケアマネジャー) 高齢者の健康状態等を考慮しながら、ケアプランの作成・相談・指導等を行います。
介護福祉士 障害者や高齢者に対して入浴・食事等の日常生活上の介護や援助を行います。
看護師 病院等で医師の指示に従って診察や治療のサポート・患者の看護等を行います。
保健師 保健所等で地域の住民への保健指導・健康管理等を行います。
理学療法士 医師の指示に従って身体上の障害がある者に対してリハビリテーションを行います。
作業療法士 身体上・精神上の障害がある者に対して様々な訓練を行います。
管理栄養士(栄養士) 福祉施設等で献立や栄養面における管理・相談等を行います。
福祉住環境コーディネーター 障害者や高齢者に対する便利で安全な住みやすい住環境についての指導等を行います。
福祉用具専門相談員 福祉用具貸与事業所において福祉機器の選定や使用方法等についての指導を行います。
社会福祉士 社会福祉施設等において障害者や高齢者に対する助言・指導・相談等を行います。
柔道整復士 デイサービス等においてリハビリテーションを行います。
言語聴覚士 コミュニケーションに障害がある者に対して援助を行います。


 

介護保険サービス事業者の指定について

■介護保険サービスの指定事業者となるためには、各サービスについての指定基準をそろえた上で申請し、指定を受けることになります。事業者の指定を行うのは基本的には都道府県ですが、夜間対応型訪問介護や小規模多機能型居宅介護・認知症対応型共同生活介護等の地域密着型サービスの事業については市区町村が指定を行います。都道府県の場合には、地域ごとの福祉保健センターや地方事務所等の出先機関を申請窓口にしている所がほとんどですが、各都道府県庁の介護保険課にて担当の申請窓口を確認する必要があります(市町村の場合にも同じように介護保険課に問い合わせて申請窓口を確認することになります)。出先機関が窓口になっている場合には、法人の本店所在地ではなく、介護保険サービス事業を行おうとする事業所の所在地が属する地域を管轄する窓口となります。

                                                           ■介護保険サービスを行う場合には、原則として「法人格を有していること」が要件となっています。株式会社やNPO法人等を設立して介護サービス事業を行うことができますし、また、現在法人で新規に介護サービス事業を始めたいといった場合にも、例えば、訪問介護事業や通所介護事業等を行う旨を定款の目的に付け加えることで事業が行えるようになっています(但し、「(介護予防)訪問リハビリテーション」・「(介護予防)通所リハビリテーション」・等医療行為に関連するサービスの一部や「指定介護老人福祉施設」・「介護老人保健施設」・「指定介護療養型医療施設」の施設介護サービスについては、株式会社やNPO法人等の営利法人は指定を受けることができません。「(介護予防)訪問看護」・「(介護予防)訪問リハビリテーション」等の医療行為に関連するサービスの一部については、個人病医院等でも指定を受けることができます。厚生労働省令の運営基準等を満たしている団体が行うサービスについては、法人格を有していなくても「基準該当サービス」としてその市区町村内でのみ介護保険が適用されることになっています)。また、「法人格を有していること」以外の要件としては、

1 「人員基準
(サービスの提供責任者・管理者・看護職員・介護職員等、サービスの実施に必要な資格要件と人員数を定めたもの)
2 「設備基準」
(サービスの実施に必要な施設の広さ及び設備・備品等を定めたもの)
3 「運営基準
(サービスの実施に必要な運営に関してのルールを定めて文書にしたもの)

の3つが挙げられています。これらの指定基準を満たしていなければ申請窓口で書類が受理されません。事前相談等を利用して、手続きを進めていく必要があります。

                                                          ■指定基準を満たすことができる条件がそろえば、指定申請書を作成し、添付書類と共に提出(サービスの形態により老人福祉法上の届出が必要になる場合があります)することになります。審査方法については原則として書類審査の形となりますが、デイサービスやグループホーム等施設や設備の比重が大きい事業については現地調査が行われます。申請の受理から指定までの日程については各自治体によって異なりますが、概ね申請書が受理された翌々月初めから事業が開始できるようになっています(介護保険サービス事業者としての指定を受けた場合には、事業者番号(ケアプランの作成や介護報酬の請求等を行う時に必要となります)が通知されることになっています)。尚、指定申請手続きの流れと申請に必要な書類(各サービスごとにより異なります)としては以下の通りになります。

@(事業者指定の申請窓口の確認)

A(開業の事前相談)

B(指定申請書類の作成)

C(指定申請書類の提出)

D(指定申請書類の受付及び審査)

E(指定の決定の通知)

F(指定事業者台帳への記載と事業者情報の公表)


1 「指定(許可)申請書」
2 「申請者の定款・寄付行為等及びその登記簿謄本又は条例等」
3 「従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
 (資格証・就業規則の写し・組織図)」
4 「事業所の管理者及びサービス提供責任者の経歴書」
5 「事業所の平面図
 (外観及び内部の写真)」
6 「運営規程」
7 「利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要」
8 「当該申請に係る資産の状況」
9 「事業所の所在地以外の場所でその事業所の一部として使用される事務所に係る記載事項」
10 「協力医療機関との契約の内容」
11 「介護保険法第70条第2項各号の規定に該当しない旨の誓約書」
12 「役員名簿」
13 「介護保険法第115条第2項各号の規定に該当しない旨の誓約書」
14 「介護給付費算定に係る体制等状況一覧表」    等

                                                          ■2006年4月の介護保険法の改正により、介護保険サービスの質を確保することを目的として、事業者が指定基準を遵守しているかどうかを定期的に確認するという事業者指定の更新制度(6年間)が導入されることになりました。 事業者は、6年ごとに指定の更新を受けなければ、指定の効力を失い、介護報酬の請求ができなくなってしまいますので、注意が必要です。尚、各サービスごとに異なりますが、更新の申請に必要となる主な書類としては以下の通りとなります。

1 「申請書チェックリスト」
2 「事業者更新申請書」
3 「質問兼告知書」
4 「誓約書」
5 「役員名簿」
6 「事業所一覧」     等


@大阪府の事業者指定についてはこちら。

A(大阪府)介護保険事業者支援センターについてはこちら。

B兵庫県の事業者指定についてはこちら。

C京都府の事業者指定についてはこちら。

D滋賀県の事業者指定についてはこちら。

介護報酬について

■「介護保険制度から介護サービス事業者に対して支払われる報酬の公定価格」のことを「介護報酬」といいますが、この「介護報酬」は「基本算定項目」(要介護度・サービスの提供時間に応じて人員配置や設備環境を反映して定められたもの)と「加算項目」(サービスの実施状況等に応じて算出するもの)から成っています。介護報酬の「単位」は、医療保険の診療報酬の点数(1点→10円)に該当するものとされており、地域やサービスの種類によって1単位の単価は10円〜10.72円までの範囲に設定されています。サービスを提供した事業所はその提供したサービスの種類ごとの単位数の合計を算出し、その地域において当該サービスに設定されている1単位の単価を乗じて売価を算定することになっています(その9割を介護保険で請求するのですが、残りの1割は利用者が負担します)。介護サービス事業者は、要介護事業については居宅介護支援事業者から、要支援事業については地域包括支援センターから「サービス提供票」を受け取り、このサービス提供票を基にしてサービスの提供を行います。そして、翌月末日までに実際にその月に提供したサービスを「サービス実績票」にまとめて居宅介護支援事業者又は地域包括支援センターに報告することになっているのですが、事業者は「サービス実績票」を基にして利用者からの1割の負担分を除いた9割を事業所の所在地の国民健康保険団体連合会(保険者である市町村から業務の委託を受けています)に請求(サービスを提供した月の翌月10日までに伝送あるいは磁気媒体を利用して帳票(介護給付費請求書及び介護給付費明細書)を提出します)することになります。請求を受けた国保連は請求内容の審査を行い、不備がある場合には事業所に返戻の通知を行い、不備がなければ請求月の翌月の月末までに事業者の指定口座に振り込まれることになっています。提供するサービスの内容により、保険給付の対象外とされているものがあります(利用者が全額を負担します)が、内容をきちんと把握しておくことが大切となります。                               ところで、生活保護を受けている者や公費負担医療等の受給者については介護保険の利用者負担分が公費の対象になっている場合がありますが、この場合は公費が適用された後の利用者負担を徴収し、公費分も国保連に請求することになります(尚、介護保険の被保険者以外の利用者に対する生活保護の介護扶助についても同様に行うことになります)。

                                                           国民健康保険中央会についてはこちら。

介護サービス事業の情報公表制度について

■利用者がサービスを選択するにあたり、事業者が適切な介護サービスを行っていくためには、経営の透明性を確保し、情報公開を行うこと何よりも大切となります。その情報公開の前提となるものとして「評価」と呼ばれるものがありますが、介護サービス事業においては、
                                                            1 「自己評価

(事業者自身が一定の基準に従い、サービスの提供状況についての見直しを行い、サービスの質の向上に努めるというもの)
                                                            2 「利用者評価

(利用者へのアンケート調査や聞き取り調査を行い、その分析を基に利用者の満足度を把握するというもの)
                                                           3 「第三者評価

(事業者・利用者以外の第三者機関にサービスの質についての評価を行わせるというもの)

等といった方法が用いられています。また、加えて2006年度から、「要介護者等が適切にかつ円滑に介護サービスを利用することができる機会を確保する」ことを目的として、

@訪問介護
A訪問入浴介護
B訪問看護
C通所介護(指定療養通所介護を除く)
D特定施設入居者生活介護(養護老人ホーム・適合高齢者専用単体住宅に係るもの・外部サービス利用型指定特定施設入居者生活介護を除く)
E福祉用具貸与
F居宅介護支援
G介護福祉施設サービス・介護保健施設サービス

等の介護サービス事業において、サービスの内容及び運営状況に関する情報を公表することが義務付けられました。この介護サービス情報の具体的な内容としては、例として、

事業所の職員体制
床面積や機能訓練室等の設備
サービスの提供時間及び利用料金

等の「基本情報」(基本的な事実情報であって、公表するだけでよいとされているもの)、

介護サービスに関するマニュアルの有無
サービスの提供内容の記録の管理の有無
職員研修のガイドラインや実績の有無

等の「調査情報」(事実なのかどうかを客観的に調査する必要があるとされているもの)

から構成されています。実際の公表の手続きとしては、年1回程度、介護サービス事業者が「指定情報公表センター」(都道府県知事から指定を受けた機関で、介護サービス事業者から報告された介護サービスについての情報の公表を行います)に報告し、報告を受けた指定情報公表センターが「指定調査機関」(都道府県知事から指定を受けた機関で、介護サービス事業者から報告された介護サービス情報についての調査を行います)に事業者への調査を依頼し、その調査の後、都道府県が定める計画に従って事業者ごとの基本情報及び調査情報の調査の結果を公表することになっています。 尚、評価・公表を行うことのメリットとしては、

1 事業の戦略目標が明確になる
2 サービスの質が向上する
3 継続的に経営改善を行うことができる
4 利用者からの信頼度をアップさせることができる
5 従業員の意識改革と教育に効果がある
6 職員の採用を円滑に行うことができる

等といったことが挙げられています。公表は、インターネットによって行われるのが原則とされていますが、利用者等からの要請により、紙媒体による情報提供・閲覧等も行えることになっています。調査や公表にかかる費用については制度の対象となる事業者が負担することになっていますが、金額はサービスの種別や各都道府県により異なりますが、1つのサービスにつき4万円〜7万円が目安であるとされています。
ところでまた、2005年4月に個人情報保護法が施行されたことに伴い、事業者に個人情報の管理を適切に行うことが求められることになりましたが、介護サービス事業者は、利用者又はその家族の個人情報を利用者のための居宅サービス計画に沿って円滑にサービスの提供を行うために実施されるサービス担当者会議介護支援専門員(ケアマネジャー)と事業者との連絡調整等において使用する場合には本人の同意書(「個人情報使用同意書」)を得ておく必要があるとされています。

                                                          @「大阪府の介護サービス情報公表センター」についてはこちら。

A「兵庫県の介護サービス情報の公表」についてはこちら。

B「京都府の介護サービス情報の公表」についてはこちら。

C「滋賀県の介護サービスの情報の公表」についてはこちら。

D「全国の介護サービス情報公表サイトの一覧」についてはこちら。

         

利用者に対するリスクと苦情への対応について

<利用者に対するリスクへの対応について> 
 

■介護サービス事業は、「社会的弱者を対象とした対人サービスです。ですので、実際にサービスの提供を行っていく中においては、事故を発生させる危険性が非常に高くなります。一般によく起こりがちであるとされている介護事故には、

1 利用者の物品又は利用者宅における物品の破損
2 利用者のケガ
3 医療行為・理容又は美容行為に付随する事故
4 入浴介助中の事故
5 食事中の誤嚥による事故
6 利用者の権利の侵害による事故

等がありますが、特に重大な事故とされているものが「利用者の身体事故」であり、そのうち特に危険で発生の可能性が高いものとして、

1 入浴介助中の事故
2 食事中の誤嚥による事故

が挙げられています。 そこで、こうした介護事故を防止するために、マニュアルの作成や注意の呼びかけ・事故防止対策の検討等が行われているわけですが、やはり「ひやりとしたこと」・「はっとしたこと」について報告をさせ、事故報告書としてまとめて記録に残し、他の職員へ伝達し、また、利用者の家族とも相談しながら適切な解決策を図り、再発の防止に取り組んでいくことが何よりも大切となります。重大な事故につながらないようにするためにも、事業者は常にリスクを背負っていることを意識し、介護事故の防止対策を講じていく必要があります。


 
<利用者からの苦情への対応について> 

                                                           ■介護サービスの指定事業者は、利用者に対してサービスを提供する前に「重要事項説明書」を手渡し、運用規定の概要やサービス提供者の勤務体制・営業日や営業時間・サービスの内容やそのサービスの利用料金・サービスの実施地域・緊急時の対応方法等について説明し、利用者の同意を得て契約を交わさなければなりません。そして、利用者からの相談又は苦情に対して迅速かつ円滑な解決を図るために、常設の窓口を置く等、その苦情の処理に努めなければならないとされています。利用者からの相談や苦情を受け付ける体制を整備し、実際に相談や苦情があった場合の具体的な処理の手順について定めておく必要があるわけです(事業者の指定申請を行う際の添付書類として「利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要」を提出することになっていますが、適切な苦情処理体制が整備されていなければ事業者としての指定を取り消される場合もあるとされています)。実際の苦情処理の流れとしては、「利用者が(サービスの提供を行った)事業者や(ケアプランの作成を行った)居宅介護支援事業者に直接苦情を言う」ということになりますが、対応が不十分だと市区町村や国民健康保険団体連合会に書面による申し立てを行うことになります(申し立てを受けた市区町村や国民健康保険団体連合会は調査の必要性を判断し、場合により改善すべき事項についての事業者への提示・調査結果や処理状況についての利用者への報告を行います)。「サービスの質に関するもの」・「サービスの範囲に関するもの」等様々なものが苦情の例として考えられますが、その対応方法の主なものとして、

1 想定される苦情への対処方法についてのマニュアルを作成する
2 従業員に対して苦情処理についての研修を行う
3 苦情の受け付け体制を整備し、苦情があった場合には迅速に対応し、苦情受け付けシート等を作成し、記録する
                                                           等といったことが挙げられます。

介護サービス事業と成年後見制度について

■高齢化の進展を受けて、高齢者を支援する必要性から介護保険制度が導入されたわけですが、この介護保険制度と同時に成年後見制度=判断能力が不十分である者の権利を保護するというもの>が導入されることにもなりました(この成年後見制度の創設の際に日常生活に係る支援の仕組みを整備するということで、地域福祉権利擁護事業=社会福祉協議会が行います>が開始されました)。この成年後見制度には、法定成年後見制度=後見人の選任を家庭裁判所が行います>と任意成年後見制度=本人があらかじめ契約によって後見人の決定を行います>があり、法定成年後見制度には、

後見{=精神上の障害により判断能力がほとんどない者}
保佐{=精神上の障害により判断能力が著しく不十分である者}
補助{=精神上の障害により判断能力が不十分である者}

という3つの類型があります。成年後見制度を利用するには、本人及び配偶者・四親等内の親族・市町村長・検察官等が家庭裁判所に申し立てを行います。そして、家庭裁判所の調査官が本人の精神状態・生活状態・資産の状況・申し立て理由等について調査を行った上で本人の判断能力についての医師による鑑定が行われて審判が決定されます。そして、この家庭裁判所の審判において選任された成年後見人に代理権(本人に代わって法律行為を行うというもの)・取消権(本人が行った法律行為を取り消すというもの)等の権限が与えられることになっています。
介護サービスの契約を行うにあたり、認知症高齢者や知的障害者等、意思能力が不十分である者に対して成年後見人が代理で契約を行うことになるわけですが、実際のケースとしては、家族がいない利用者との契約を行う場合・任意後見制度を活用する場合が考えられます。家族がいる利用者の場合にはその家族が行うことになりますが、家族がいない利用者の場合には成年後見制度を利用して契約を行うことになります。また、自らの能力が衰える前に任意後見制度を利用して財産管理の方法やサービスを提供する事業者・医療サービス・介護サービスの内容等について信頼のおける者に対してあらかじめ依頼しておくということもできるようになっています(成年後見人には、家族や親類縁者・利害関係のない第三者がなることができます)。