利用者に対するリスクと苦情への対応について

<利用者に対するリスクへの対応について> 
 

■介護サービス事業は、「社会的弱者を対象とした対人サービスです。ですので、実際にサービスの提供を行っていく中においては、事故を発生させる危険性が非常に高くなります。一般によく起こりがちであるとされている介護事故には、

1 利用者の物品又は利用者宅における物品の破損
2 利用者のケガ
3 医療行為・理容又は美容行為に付随する事故
4 入浴介助中の事故
5 食事中の誤嚥による事故
6 利用者の権利の侵害による事故

等がありますが、特に重大な事故とされているものが「利用者の身体事故」であり、そのうち特に危険で発生の可能性が高いものとして、

1 入浴介助中の事故
2 食事中の誤嚥による事故

が挙げられています。 そこで、こうした介護事故を防止するために、マニュアルの作成や注意の呼びかけ・事故防止対策の検討等が行われているわけですが、やはり「ひやりとしたこと」・「はっとしたこと」について報告をさせ、事故報告書としてまとめて記録に残し、他の職員へ伝達し、また、利用者の家族とも相談しながら適切な解決策を図り、再発の防止に取り組んでいくことが何よりも大切となります。重大な事故につながらないようにするためにも、事業者は常にリスクを背負っていることを意識し、介護事故の防止対策を講じていく必要があります。


 
<利用者からの苦情への対応について> 

                                                                   ■介護サービスの指定事業者は、利用者に対してサービスを提供する前に「重要事項説明書」を手渡し、運用規定の概要やサービス提供者の勤務体制・営業日や営業時間・サービスの内容やそのサービスの利用料金・サービスの実施地域・緊急時の対応方法等について説明し、利用者の同意を得て契約を交わさなければなりません。そして、利用者からの相談又は苦情に対して迅速かつ円滑な解決を図るために、常設の窓口を置く等、その苦情の処理に努めなければならないとされています。                                   利用者からの相談や苦情を受け付ける体制を整備し、実際に相談や苦情があった場合の具体的な処理の手順について定めておく必要があるわけです(事業者の指定申請を行う際の添付書類として「利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要」を提出することになっていますが、適切な苦情処理体制が整備されていなければ事業者としての指定を取り消される場合もあるとされています)。                            実際の苦情処理の流れとしては、「利用者が(サービスの提供を行った)事業者や(ケアプランの作成を行った)居宅介護支援事業者に直接苦情を言う」ということになりますが、対応が不十分だと市区町村や国民健康保険団体連合会に書面による申し立てを行うことになります(申し立てを受けた市区町村や国民健康保険団体連合会は調査の必要性を判断し、場合により改善すべき事項についての事業者への提示・調査結果や処理状況についての利用者への報告を行います)。「サービスの質に関するもの」・「サービスの範囲に関するもの」等様々なものが苦情の例として考えられますが、その対応方法の主なものとして、

1 想定される苦情への対処方法についてのマニュアルを作成する
2 従業員に対して苦情処理についての研修を行う
3 苦情の受け付け体制を整備し、苦情があった場合には迅速に対応し、苦情受け付けシート等を作成し、記録する
                                                                   等といったことが挙げられます。

介護サービス事業と成年後見制度について

■高齢化の進展を受けて、高齢者を支援する必要性から介護保険制度が導入されたわけですが、この介護保険制度と同時に成年後見制度=判断能力が不十分である者の権利を保護するというもの>が導入されることにもなりました(この成年後見制度の創設の際に日常生活に係る支援の仕組みを整備するということで、地域福祉権利擁護事業=社会福祉協議会が行います>が開始されました)。この成年後見制度には、法定成年後見制度=後見人の選任を家庭裁判所が行います>と任意成年後見制度=本人があらかじめ契約によって後見人の決定を行います>があり、法定成年後見制度には、

後見=精神上の障害により判断能力がほとんどない者>
保佐=精神上の障害により判断能力が著しく不十分である者>
補助=精神上の障害により判断能力が不十分である者>

という3つの類型があります。成年後見制度を利用するには、本人及び配偶者・四親等内の親族・市町村長・検察官等が家庭裁判所に申し立てを行います。そして、家庭裁判所の調査官が本人の精神状態・生活状態・資産の状況・申し立て理由等について調査を行った上で本人の判断能力についての医師による鑑定が行われて審判が決定されます。そして、この家庭裁判所の審判において選任された成年後見人に代理権(本人に代わって法律行為を行うというもの)・取消権(本人が行った法律行為を取り消すというもの)等の権限が与えられることになっています。
介護サービスの契約を行うにあたり、認知症高齢者や知的障害者等、意思能力が不十分である者に対して成年後見人が代理で契約を行うことになるわけですが、実際のケースとしては、家族がいない利用者との契約を行う場合・任意後見制度を活用する場合が考えられます。家族がいる利用者の場合にはその家族が行うことになりますが、家族がいない利用者の場合には成年後見制度を利用して契約を行うことになります。また、自らの能力が衰える前に任意後見制度を利用して財産管理の方法やサービスを提供する事業者・医療サービス・介護サービスの内容等について信頼のおける者に対してあらかじめ依頼しておくということもできるようになっています(成年後見人には、家族や親類縁者・利害関係のない第三者がなることができます)。